ガキの使い「笑ってはいけない」は現代の禊(みそぎ)である
絶対に笑ってはいけない
少し気が早いかもしれないが、年末の話である。
コロナのおかげですっかり忘れていたが、年末の特番で不祥事芸人の復帰する話が出ているようだ。公共施設の新しい使い方を示したことで派手なインパクトを残したので、記憶している人も多いだろう。
一般人も自粛していたが、彼もまた自粛していたのだ。
自粛の理由は異なるが。
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記事によると、大晦日の風物詩となった『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』の年越し特番“絶対に笑ってはいけない”を「禊(みそぎ)」にして、メディアへ復帰するのではないかとのことだ。
気になるではないか。
個人的には件の芸人の所業には興味がない。私のお悩みセンサーに引っかかったのは
「禊」
である。
禊(みそぎ)とは
み‐そぎ【×禊】
1 身に罪や穢(けが)れのある者、また神事に従事しようとする者が、川や海の水でからだを洗い清めること。
禊には二通りの方法があるらしい。
一つは、洗うことで穢れが落ちて身体が綺麗になる方法だ。身体を洗ったついでに精神面もスッキリする。ちょっと強引ではあるが、まあまあメタファーとして理解できるロジックである。
問題は二つ目である。イベントに参加することで精神的な汚れが落ちるらしい。そこには「洗う」ことのメタファーは無いようだ。テンションが上がって嫌なことを忘れられるということか。
ロジック的には理解が難しいが、ノリの良さでウヤムヤにしてしまえ、という思考の流れは分かる気がする。
理屈は微妙だが、事実として禊イベントは歴史的に続いてるわけだ。
禊は晦日に行われる。晦日とは毎月の最終日のこと。ならば大晦日に行われるイベントを禊とするのは日本古来の文化にそっていることになる。
これまでも「絶対に笑ってはいけない」は禊イベントとして、数々の不祥事芸能人の復帰の場として機能してきた。私自身、大晦日に視聴して笑っていた当事者でもある。
なぜに特番でネタを披露すると「社会的な許可」を得たことになるのか。いまだに良く理解できないが、気分としては「復帰OK」という気持ちになるから不思議である。
そういうわけで2020年の大晦日もまた、テレビで禊イベントを観ることになるのだろう。
令和の時代に、テレビのお笑い番組で民俗学を感じるとは想定外だったが、日本古来の文化は姿形を変えながら連綿と続いているのだなぁ、などと物思いにふける初秋の夜であった。