吾輩は悩むのが趣味である

悩みが尽きない人々に読んでいただきたいのです

「傾聴」はカラオケの手拍子である



今では悠々自適に窓際で働く私だが、10年ほど管理職だったことがある。
当時は、旧来の部下を管理するという考え方から、自分で考えて動く社員を育てる方向へシフトしつつある時期であり、コーチングや1on1(週一回の部下との個人面談)が普及しつつあった。そんなわけで、私の勤め先でも流行りのコーチングを導入していたのであった。

コーチングの基本は「傾聴」だ。とにかく相手の話を聞くことがコミュニケーションの大前提なのだ。

傾聴の目的は相手を理解すること。
そのため、大事なのは、
●話す姿勢、仕草、表情、声の調子など言葉以外の行動に注意を向け、理解する
●言葉によるメッセージに、耳を傾け、理解する
●言葉の背後にある感情まで受け止め、共感を示す

傾聴とはなんですか?(人事労務Q&A)|人事、採用、労務の情報ならエン人事のミカタ


管理職向けのコーチング研修でも 同じことを教わった。
「あなたの話を聞いてますよー」という姿勢を分かりやすく示すことで、心理的安全性を高めて話しやすい空気を醸成するのだ。

ということで、研修で教わったように相手の話を真摯に聞き続けるわけだが、ただ聞いているだけではいけない。相手が話しやすいように相づち等を織り交ぜる技術が必要になるのだ。

しかし、それまでの人生で聞き上手になろうと意識したことが無いので、私のリアクションは何ともぎこちない。中年男性の首振り人形(等身大サイズ)の完成である。

簡単なようで奥が深い。それが傾聴なのだ。

そんなわけで、傾聴というものが感覚的につかめないまま時は過ぎたのであった。


「傾聴」はカラオケの手拍子

長年の私の疑問が解決されたのは、たまたま読んだ一冊の本だった。内容は少年サッカーでの選手育成の本である。

「日本のメッシの育て方」
上野山信之:著


その中で述べられた一言が「傾聴」はカラオケの手拍子である。
まさに言い得て妙!である。

たしかに良い感じの手拍子があると歌いやすい。その空間の中で自分が肯定されているような気分になる。あくまでも主役はマイクを握っている自分だが、自分を主役たらしめているのは聞き手であり、手拍子は肯定のサインとして機能しているのだ。

管理職の頃は難しく考え過ぎて、傾聴の時の反応の出し方に迷いがあった。しかし、カラオケの手拍子だと思えば自然なタイミングで頷けそうである。

というわけで今日もまた悩みはつきないのであった。
とかくこの世は悩みだらけである。