「ハラスメント」と「おススメ」の境界線は?
クリエイティブな生き様
ワイドショーの司会者に親近感を感じる。
誰も問題にしていないのに、そこに重大な瑕疵があるかのうように騒ぎ、あたかも国民共通の悩みのように語る。そして重箱の隅をつつくように悩みごとを探して大騒ぎする。「大騒ぎするからには何かしら問題なのだろう」という世間の空気を醸成し、あれよあれよという間に火の無い所が猛火に包まれるという寸法である。
「私に似ているじゃないか…」
社会に難癖をつけ、誰もが気にないようなことを大問題だと訴える。火の無い所に火をつける姿に共感である。クリエイティブな生き様とも言えよう。スケールが少し違うだけだ。
さて、そんなワイドショーが新たな火種を着火したようだ。
news.yahoo.co.jp
「鬼滅の刃ハラスメント」、略して「キメハラ」なる新手のハラスメントが発生しているとの報道である。記事内で挙げられいるハラスメント行為を見てみよう。
番組では、キメハラの例として、次のようなものがあがっていました。
・「鬼滅まだ見てないの?」「見ようよ」と押し付けてくる行為
・「鬼滅がダメな人っているんだ」と好みを否定する行為
・「鬼滅がつまらない、興味ない」と他人に言えない雰囲気
この文面だけだと、自分の感動を知人・友人と共有したいだけにしか読めない。ハラスメントクリエイターのTVワイドショーとしてはパンチが弱い気がする。どうしたワイドショー。なんだそのソフトタッチな事例は!ハラスメントってのはもっとエグイはずだろう!
などとワイドショーに憤りを感じていたところ、ふと気づいたのである。
「私が思ってるよりハラスメントの定義って広いのでは?」
ハラスメントと言えば、どなったり、殴ったり、お触りしたり、エッチなことを言ってみたり、もっと社会的な常識から逸脱する行為だと思い込んでいたのだが、もしや逸脱しなくてもハラスメントになるのか。
というわけで我らが厚労省のサイトをチェギラ!。
「ハラスメント基本情報」とある。ハラスメント初心者の私にとって、基本情報は重要だ。厚労省が認定している行為なのだから、これが「ハラスメント of ハラスメント」という認識で間違いないだろう。
やはり「パワハラ」「セクハラ」が全てのハラスメントの祖先と言えそうだ。しかし、さすが国の機関だけあって厚労省のサイトで扱うハラスメントがフォーマルな感じだ。「キメハラ」のようなカジュアルなハラスメントは別のところにありそうだ。
カジュアルハラスメントを求めてヤフーニュースにアクセス。
記事内に「次々に生まれる“ハラスメント時代”」とある。これは期待できそうだ。
メジャーなハラスメントに、社会的に地位のある者(政治家、社長や上司、教授など)が、権力や立場を利用して嫌がらせをするパワーハラスメント(パワハラ)があり、精神的な嫌がらせはモラルハラスメント(モラハラ)と呼ばれます。両者を含みながら、特に職場に関係するものは、マタニティ/パタニティハラスメント(マタハラ/パタハラ:妊娠・出産、育児をきっかけに働く女性/男性へ)、リストラハラスメント(リスハラ:リストラ対象者へ)、就活終われハラスメント(オワハラ:内定の代わりに他の企業を断るよう就活中の学生へ)、カスタマーハラスメント(カスハラ:顧客から店員・従業員へ)などが挙げられます。
このあたりは私でも知っている基礎的なハラスメントだ。
パワハラ、モラハラ、マタハラ、カスハラは既にスタンダードな「ハラ」である。もう少しスクロールしてみよう。
ドクターハラスメント(ドクハラ)、テクノロジーハラスメント(テクハラ)、カラオケハラスメント(カラハラ)
このあたりのハラスメントは初見である。やはりハラスメントの裾野は広がりを見せているようだ。勉強になる。
しかし「キメハラ」的なカジュアルハラスメントのカテゴリーとは異なるようだ。
押し付けハラスメント【価値観】
また、“何かを押し付けてくる”タイプのハラスメントもあります。冒頭にも触れた“ロジハラ(ロジカルハラスメント)”も含まれると思われる価値観やバイアスの押し付けがその一つです。
「価値観の押し付け」とある。キメハラは「押し付けハラスメント」に分類されそうだ。
「ハラスメント」と「おススメ」の境界線は?
しかし、一方で「価値観の押し付け」は「有益な情報の共有」という一面も持っている。良いと思ったものを推奨する「強度」の具合で「ハラスメント」にもなり、「おススメ」にもなるのではないだろうか?
仮におススメ情報がハラスメントに該当するとなったら、アマゾンの商品レコメンドなどは「レコメンドハラスメント」、通称「レコハラ」ではないか。この論理でいくと、他人に何かをおススメする行為はハラスメントに該当する可能性を含むことになる。
受け取る側が不快だと感じたら不快なのであれば、レコメンドが不快だからレコハラ、というロジックは成立するな。
鬼滅の刃のことで悩んでいたはずだが、なぜだかアマゾンの話になってしまった。
よもやよもやである。
というわけで本日も悩みはつきないのであった。
とかくこの世は悩みだらけである。